SPI REPORT

真相究明:“TVスポット達成率”の低下理由(第三回)

今回は最終回となります。第二回目に引き続き、購入GRP量と獲得GRP量の誤差の発生理由の解説、最後に、TVスポット達成率の低下を食い止めるための予防策をご案内していきましょう。

応用編(後編)

スポット挿入位置による誤差

CMが挿入される枠には、連続して複数の広告が露出するケースがほとんどです。すなわち露出タイミングによって、獲得する視聴率に差が生じる可能性があるということになります。

タイムの場合、提供している各社の露出順序は、基本的に放映回ごとのローテーションとなります。したがって同じ番組を購入している別の企業との間に有利不利は出にくいと言えるでしょう。

一方、スポットはどうでしょうか。下の例をご覧下さい。これは、2006年6月6日のある番組から抽出したものです。同じスポットCM枠にA社からI社まで計9社のPTが含まれており、最大差は1.7ポイントに及びます。

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基本的にスポット内での出稿順の指定はできないと言われます。しかし、結果的にスポットのほとんどが悪いポジションに挿入されていたならば、そのキャンペーンの達成率に大きな負の影響を与えることになることは想像に難くありません。
季節性による誤差

HUTという言葉をご存知でしょうか。HUTとは“Households using television”の略で、テレビ番組を視聴している世帯の割合をカウントした総世帯視聴率のことです。

HUTの変動には季節性があります。例えば下の赤いラインは、19時から21時における、直近五年間の月別総世帯視聴率のグラフです。夏場は明らかに低く、秋や年初は比較的高くなっています。夏場は日が長く、この時間帯に自宅にいる割合が減少し、その結果が現れているものと言えます。

また、同様に7時から9時までの青いラインと見比べると、季節性の影響度合いは時間帯によっても若干異なることが認識できます。

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裏番組や異常値による誤差

裏番組による影響は、スポットが挿入されたタイミングに他局で特番などが放送された場合に生じます。ワールドカップやオリンピックのような注目度の高いスポーツ番組の放送はもちろん、人気ドラマの最終回なども高視聴率を獲得するケースが多いため、それらが裏番組にある場合、スポット視聴率は予定を大きく下回る可能性があります。

逆にスポットが挿入される番組においても、そのコンテンツなどにより通常とは大きく異なる視聴率を獲得するケースがあります。これも達成率に影響を与える要因となります。

号数による誤差

号数については初回に取り上げました。号数により、購入するスポット枠全ての推定視聴率が確定するため、簡単に言えば、スポット枠の料金表のようなものでした。

簡単に例をおさらいしましょう。

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上の例の場合、最終的にスポットが獲得する視聴率は変わらないため、当然“Sample 2”の号数が最もリスクの低い設定となります。“Sample 4”の場合と比較すると、その差は3.9ポイント。これに購入時の世帯GRPコストをかければ、たった1本のスポットで生じる損失額が簡単に明らかになります。

号数は、キャンペーン毎もしくは月毎に設定されるのが一般的です。また、全局統一やエリア統一の号数を用いるケースもあれば、局別に異なる号数を使用するケースもありますし、直近三ヶ月間以内から選ぶ場合もあれば、昨年同時期の号数を選んでいる場合もあります。いずれにせよ、リスク回避を考えた号数設定が望まれます。

追加スポットによる誤差

これは、一般的にサービススポットと言われるものが多く含まれ、予定本数以上のスポットなどが該当します。当然これらは広告主にとってプラスのもので、同じく達成率の変動に影響を与える要因となります。

追加スポットは、局からサービスとして寄与されるものや、広告代理店の交渉力によって獲得されたもの、またはスポットの急な移動による損失などに対する補償として発生するものなどが考えられます。これらは、出稿量や出稿時期にも大きく関与し、必ず得られるものではありません。多くの広告主にとって、追加スポットは特別なものと言えるでしょう。

視聴率推定方法の問題による誤差

ここでは更に根源的な問題を取り上げます。この問題は特にPTに対して大きな影響を与える傾向にあります。それでは詳しく説明しましょう。

既に、購入するスポットの予定視聴率が、号数により推定されていると述べました。

第一回目の後半部において、PTスポットの推定には、号数週における当該枠の「番組平均世帯視聴率の前四週平均」が用いられると述べました。また、第一回目の前半部では、番組平均視聴率と時点視聴率の違いを解説致しました。ここに答えが隠されています。

つまり、“PTスポットの視聴率”を“番組平均視聴率で推定している”ということに問題があるのです。

仮に60分の番組があったとしても、PTの枠は数分程度、同様にタイム枠とSB枠があり、ほとんどの時間を番組本編が占めます。当然ですが、番組本編では視聴率が高く、CMでは視聴率が低くなる傾向にあります。加えてタイム枠は、視聴率の高い箇所に配置される傾向が強いため、結果として、本編やタイム枠を含んでいる番組平均視聴率と、実際にPTが挿入された箇所のみを計算したPT平均視聴率では大きな差が生じます。

一方、SBの場合は番組終了一分前の視聴率がベースとなります。多くの場合、番組本編は含まれず、実際にSBスポットが露出された箇所から計算されており、大きな問題は生じにくいと言えます。

下は第一回に取り上げた例でもありますが、番組視聴率とPT視聴率に差が出る典型的な例です。

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仮に号数による推定視聴率が18.6ポイントだったとすると、実際のPT平均視聴率は15.5ポイントだったので、PTスポット広告主のほとんどが達成率を下げたことになります。

このように、番組平均視聴率と実際のスポット(PT)平均視聴率に差が生まれている以上、この推定方法では、ある程度の損失が自然に発生してくるという訳です。

予防対策編

長々と、TVスポット達成率の増減理由について述べてきました。

最後に、達成率低下の防止に効果的な対策について、簡単にご紹介致しましょう。

まずはオンエア前について。予算と期間が決定しているとすれば、最初に局の選択や局シェアを決定する必要が生じます。この時、やはり直近の視聴率傾向の分析や、過去のキャンペーン結果を参考にすることが非常に有効と言えます。現在の視聴率が高く、過去の平均が低ければ、それだけ達成率の低下を防ぐことができますし、追加スポットが多い局を重視したり、移動スポットによるロスが多い局の優先度を下げたりすることも重要な選択肢となるでしょう。使用局が決定した後、最もリスクの少ない号数確認の作業を行います。

発注後、最初のスケジュール案が作成された段階でチェックをします。技術的に言えば、時間枠変更による誤差や号数による誤差はすぐに判明します。この時、大きなロスが予想されるものを可能な限り別のスポットなどへ変更してもらうことによって、損失のリスクを減らすことができます。スポットの変更は必ずしも受け入れられるものではありませんが、全く受け入れられない訳でもありません。特に、初案から最終案の作成までに時間的な余裕がある場合には認められるケースが多いと言えるでしょう。

オンエア後は、やはり局別に問題点をトラッキングすることが非常に重要です。スポットの移動や、CMタイプの変更、スポットポジションなどはオンエア後でなければわかりません。

他の局と比較して、明らかに結果の悪い状態が続いている場合には、次回キャンペーンにおいて出稿量シェアを下げることを考慮すべきです。また、詳細に問題点が指摘できれば、広告主や広告代理店の担当者にとっても非常に有益な情報となり、改善に繋がるアクションが講じやすくなります。

そして、「結果に対して常に厳しくチェックを行っていく」という姿勢をステークホルダー間で共有すること。これが達成率を改善していく大前提であるのは言うまでもありません。

エスピーアイのTV Auditサービスには、TVスポットの購入監査として10年以上積み重ねてきたノウハウがあります。全三回にわたり述べてきた内容は、そのサービスの一部を技術的な観点からご説明したものです。少しでもTV Auditにご興味を抱かれた方は、どうぞお気軽に弊社までご連絡下さい。

文責:エスピーアイ

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