SPI REPORT

マーケティングROI/メディアROI測定手法のご紹介

売り上げに貢献しているのはTVだけ?

SPIでは、マーケティング施策別(例えば価格や配荷率などの要素も含む)あるいはメディア別にROI(M-ROI)を把握したい、というお話をよくいただきます。M-ROIは、投資配分を決める際には最も重要な指標なのですが、実際にきちんと把握できているケースは少なく、この節の表題のような「無難な」結論に帰着させられてしまっていることがよくあります。

これは、ROI測定の難しさによると思われます。というのも、基本的に売り上げデータは一つ、各施策・メディアの投資額データは複数ですから、単純にReturn(売り上げ)をInvestment(投資額)で割り算するだけでは結果が得られず、分析を経由しなければならないためです。

多くのクライアントさんのお話をうかがっていると、M-ROIの測定に関するご要望は、以下の2つに大別されるようです。

  1. M-ROIをどうやって測定すればよいか、その方法を知りたい
  2. M-ROIを測定してみたけれど、よい結果が得られない

このレポートでは、この2つについてそれぞれのソリューション、またはケーススタディをご紹介します。また、ここではメディア別のROIを測定するものとして話を進めますが、マーケティング施策に対するROI測定も基本的には同じものです。

1 M-ROIをどうやって測定すればよいか、その方法を知りたい

M-ROIの測定には、一般的に「回帰分析」という手法がよく使われており、弊社でもこの手法を主に用いています。ここでは、それについて簡単にご説明します。すでにご存知の方は、2にお進みいただいても結構です。
まずデータですが、下図のような時系列のものがよく使用されます。
 

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このデータについて、目的となる変数(セールス)の動きと、それを説明する変数(各メディアの投資額)の動きを比べて、その動きの近さでセールスへの「貢献度」の数値を決めていきます。また、その際にはメディア間の関係も考慮されます。
「貢献度」とは、そのメディアに1単位(例えば100万円)投資したときに得られる目的変数の増減量であり、つまりROIそのものです(下図参照)。

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ただし、適切な結果を得るためには、やみくもにデータを分析にかけるだけでは不十分です。マーケット状況やデータの内容を事前に理解し、そこからの仮説に基づいて分析を行うこと、テクニカルな観点ではデータの加工や分析手法について試行錯誤を繰り返すことが必要になります。詳しくは2をご覧ください。

2 分析をしてみたけれど、よい結果が得られない

ここからご覧になった方は、回帰分析のような手法を用いて実際に分析された経験をお持ちか、あるいはその結果をご覧になったことがあろうかと思います。SPIでは、過去の経験から、M-ROI分析において良い結果を出すには、以下の3点が重要であると考えています。
  1. 周辺情報の理解・データからの仮説構築
  2. データの加工技術・ノウハウ
  3. 手法の工夫

A)については、分析の前に当該マーケットの状況を理解し、かつ基礎集計などを施したデータを十分観察し、分析が現実とかけ離れたものにならないよう、おおまかな方向性を持つために行います。また、得られた分析結果を適切に解釈するためにも、このプロセスは重要です。
B)、C)は技術的な問題です。そのままのデータを分析にかけるだけでは、良い結果が得られる可能性はほとんどありません。仮説に基づいてデータを加工し、様々な回帰分析の手法を試す必要があります。特に、以下で説明する「多重共線性」の問題は非常に深刻です。

多重共線性(マルチコ)の問題

回帰分析を行う上で、最も大きな技術的な問題は多重共線性(以下共線性)の問題です。これは、
「各メディアの出稿量の変動(相関)が似ている場合、貢献度がうまく算出できない」
というものです。現実的に考えた場合、キャンペーンなどで各メディア一斉に出稿することはよくあることですので、これは分析上大きな障害となります。

共線性を回避するために

ベーシックな回帰分析でこの共線性を回避することは難しいのですが、それを回避するための手法も多くあります。一例を挙げますと、
  • PLS回帰分析
  • 主成分回帰分析
  • リッジ回帰分析
  • ベイズ回帰分析
  • 2段階重回帰モデル
などです。ここでは、「PLS回帰分析」の適用例をご紹介します。

PLS回帰分析の適用例

PLS回帰分析とは、各メディアから共通した成分を取り出し、その成分で回帰分析を行う手法です(下図参照)。「成分を取り出す」とは、例えば国語・数学・理科・社会・英語のテストの得点から、「理系能力」「文系能力」のような「総合的な要素」を抽出するようなイメージです。ただしPLS回帰分析では、各成分は目的変数(ここではセールス)をできるだけ説明するように抽出されます。

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以下の点で、PLS回帰は共線性を持ったデータに対して非常に有効です。
  • 成分同士が無相関に近づく
    • 前節で説明したとおり、説明変数間に相関があると、共線性の影響で適切な結果が得られません。しかし、PLSで抽出する成分同士は相関がほとんど無いため、共線性の問題を回避することができます。
  • 説明変数の数を減らすことができる
    • 説明変数が多ければ、それだけ共線性が起こる可能性が高くなります。PLS回帰では、成分を抽出することで説明変数の数自体も減らすこともできますので、これも共線性の回避に貢献します(例えばメディア間の相乗効果を測定する際など、説明変数が多くなることがあります)。

では、強い共線性を含んだ広告費データとセールスデータを使って、通常の回帰分析と、PLS回帰分析を行った結果をご覧いただきます。

20071127-4.PNG上図左が通常の回帰分析、右がPLS回帰分析による結果です。

通常の回帰分析では、ラジオの貢献度が非常に高く、TV、新聞と続き、雑誌とインターネットにいたっては、投下するほどセールスを押し下げるという、一般的には解釈しにくい結果になってしまいました。これはおそらく共線性の影響を受けているものと思われます。
これに対してPLS回帰分析のほうでは、共線性が回避され、現実的な貢献度を得ることに成功しています(ただし、共線性が回避されたかどうかを正確に見るためには数値計算が必要です)。

最後に

以上、M-ROIを測定する手法の一つである「回帰分析」とそのバリエーションについて紹介しました。今回は各メディア単体での貢献度についてのみ紹介しましたが、メディア間の相乗効果についても、これらの手法などを用いての算出が可能です。
これを含め、今回の内容にご興味、ご関心のある方はSPIまでお問い合わせください。

より詳細な情報をお求めの方は、spiindex@spi-consultants.netまでご連絡下さい。

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