SPI REPORT

わが国における広告メディア戦略立案に関する問題点と今後の方向性

. はじめに

AMA(American Marketing Association)では、「広告とは、企業、非営利組織、政府機関あるいは個人が、彼らの製品、サービス、団体、またはアイデアについて特定のターゲット市場あるいはオーディエンスに対して、伝達および説得のためのメッセージを有料のマスメディアで流すことである」と定義しています。そしてこの内容を突き詰めれば「メッセージをメディアで流すこと」すなわち、広告表現戦略と広告メディア戦略が浮き上がってきます。

また米国でテキストブックとして広く用いられているWellsらの「Advertising Principles and Practice」は、5章立てになっており、1章:広告の基礎と環境、2章:広告の背景分析、プランニング、そして戦略、3章:広告メディア、4章:広告表現、5章:IMC(Integrating Marketing Communication)の要素、という構成になっています。1章、2章は戦略面の記述であり、3章がメディア、4章が表現、5章がプロモーションなど他の項目となっており、明らかに広告表現戦略と広告メディア戦略が研究上において大きな要因であることは確かです。加えて日本において表現戦略に関しての研究は多く、また著述も数多く出版されていると考えられています1)

一方広告メディアに特化した形での研究あるいは著述は日本では非常に限定されています。米国ではSissors & Bumbaの『Advertising Media Planning』、Surmanekの 『Introduction to Advertising Media』といったかなり実務的に有用と思われるもの,またRossiter & Danaherの『Advanced Media Planning』といった上級者向けのものなど多くのテキストがだされており、メディアプランニングに関する研究も多いです。他方日本では、翻訳書として、Lancaster & Kent(岸、竹内訳)の『戦略的メディアプランニング』とBarban, Cristol & Kopec(小林太三郎 監訳、中山勝己訳)の『マーケティングからみた媒体プラニング』が認められる程度と思われ、十分とは言えない状況と考えられます。また学術的研究としても広瀬が「メディア・プランニングの基礎的研究」でこれまでのメディアプランニングの研究のレビューを行っていますが、それをみても論文数も限られており十分とは言える状態ではありません。

II. 高度なメディアプラン立案への障害

特にわが国においてメディアプランニングに対する取り組みが学術研究領域、また実務領域においても十分ではありませんでした。学術研究領域では、欧米と比較しても量的・質的にも十分とは言えないことは上述しましたが、実務界においてもメディアプランニングの領域が他の表現戦略等と比較しても十分な取り扱いが行われていなかったと考えられます。これについて、仮説レベルではありますがいくつかの理由を提示することができます。

(1) マスメディア主要4媒体(TV、ラジオ、新聞、雑誌)を中心としたコミュニケーション活動が中心で行われていたために複雑な分析等をそれほど必要としなかった。

(2) TV局や新聞社などの媒体社の力が広告主や広告会社と比較し強く、広告メディアの使用についてのあらたな試みなどが受け入れられにくい状況であった。

(3) 広告会社への報酬が、広告メディアの取り扱い金額に対する一定のパーセンテージで計算されるコミッション制であったため、広告会社が効率的なメディアの使用に対し、手間があまりかからず、取り扱い金額が増える提案を行いがちな仕組みとなっていた。また特にTVメディアに関しては、クライアントコストという広告主が広告会社に支払う金額を、メディア側で提示していたため、広告会社が自社の利益を減らして値引きを行わない限り、どの広告会社から購入してもメディアのコストが同じであるという構図があり、TVスポットのコストという点では広告会社間での競争が起こりにくい状況にあった。これまでは広告会社が積極的に自社の利益を減らす提案をすることもそれほどは多くはなかったと考えられる。また競合他社がどの程度の金額で広告メディアを購入しているかも明らかにされておらず、また広告会社がどの程度の利益を当該広告主から得ているかを広告主に伝えることも少なく、広告主が広告メディアの価値判断を行う上で情報が欠如していたといわざるをえない。

(4) 一般的に数量的な分析が多く行われるメディアプランニングに比べ、表現戦略は実際の視覚、聴覚等で広告主が判断できるため、表現での提案を先に行い、その表現アイデアの良し悪しでメディアの取り扱いも自動的に決定するといった取り決めが見られた。

(5) 日本では欧米と比較しても広告メディアに関する情報/データが不足しているといわれており、適切なメディアプランを立案するには不十分な状況であった。

このような点が実務界でメディアプランニングが重視されていなかった理由と考えらます。


1) たとえば、植条則夫『広告コピー概論』、宣伝会議新社、1993年、など。


-- 次号では「高度なメディアプランニングの必要性」についてお話します --

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