SPI REPORT

III. 高度なメディアプランニングの必要性

一方、景気の低迷、IT技術の進歩などマクロ環境の変化は21世紀を迎え大きく変化しています。そのような中、はたして従来通りのメディアプランニングで十分であるのかと言う疑問がでてきます。第一の点、広告メディアの複雑化の問題ですが、図表1で示した通り、2003年時点でもTVなどマスコミ4媒体の広告費の割合は3兆5,822億円と依然大きな割合を占めています。一方、インターネットの広告費は1,183億円、CSなどのサテライトTV等の広告費は419億円と比率的には低くなっています。しかしながら、特にインターネット広告の伸び率は高く、また携帯電話の広告など新たな広告メディアの出現は驚くばかりです。広告を流す場の増加は受け手側にとってはそれだけ、一つのメディアに接触する時間、そして関与が薄くなることが考えられます。TVメディア1つをとっても現在の視聴率調査方法ではビデオやHDDで録画したものは計測されません。TV広告が日本にスタートして約50年がたちますが、かつての人気番組たとえばドリフターズの「8時だヨ!全員集合」が50.5%という視聴率をとった時代とは明らかに異なるメディア状況となっています。

また多くの新たなメディアの出現と同時に検討されるべきことはターゲットとなる消費者の広告メディアへの接し方の変化という点です。新聞メディアにおける若年層の購読率の低下の問題が叫ばれています。学生の中にもYahooのトップページで必要なニュースは十分得られると考えているものも多いようです。これまではマスメディア、特に新聞、TVから情報を得ていたものが今後これらのメディアはカタログ的に情報のエッセンスのみを得、より詳しい情報は選別されたメディア、例えば、雑誌、インターネット、CS・BS放送などから得るという状況になるのではないでしょうか。そのような状況の中、自社のターゲットとなる消費者に広告メッセージを到達させること自体も困難になると同時に、その内容を的確に理解させるメディアの選択も十分考慮されなければならない状況にあると考えられます。

第2の広告媒体の融通性という問題であるが、昨今の景気の低迷、新しいメディアの出現、技術の革新などで、媒体社もある程度受け入れ始めています。例えば、新聞におけるカラー広告はかつてかなり量的に制限があったが、現在は一般的なものとなっており、加えてスポーツ紙等でしか受け入れられていなかった5段、7段といった定形の広告サイズではない、変形広告も大手新聞社でも受け入れるようになり始めています。またプリント媒体でのEDI化(Electronic Data Interchange:電子データ交換)が進んでおり、原稿の入稿から印刷までをデジタル情報で受け渡しをし、それにかかる時間を短縮しょうとしています。これらの技術的な研究も含め、ますます状況は変化をみせると考えられます。

第3の広告主と広告会社の取引状況も大きく変わろうとしています。これまでの特に広告会社が受け取る報酬、すなわち広告メディアを出稿することを広告主の代理として行うことによる手数料であるコミッションの論議については一種タブー視されてきました。しかしながら2002年秋に社団法人日本広告主協会が日本で初の広範囲にわたる調査を広告会社の報酬に関して行いました。この内容を基に2003年6月には広告会社への報酬制度に関するガイドブックと考えられる「広告会社への報酬制度-フェアな取引に向けて」が発行され、いよいよこの問題に関してもメディアも含め、広告主、広告会社が話し合いを持てる状況になり始めています。これと前後して、欧州最大の広告メディア専門会社カラ社(CARAT)が中堅の広告会社中央宣興とジョイントベンチャー企業を立上げ、日本で初めて広告メディアのプランニングと購入に特化したサービスを始めました。広告表現等の業務を行わないために、当然そのコミッション率は5%程度とかなり低いものであり、それを前面に押し出し、業務を行う企業が現れたことは注目に値します。これまでもコミッションを減らし新たな広告主を獲得しようとする広告会社はありましたが、既存顧客との不公平感などもあり、公に標榜するようなことはできませんでした。しかし国内の広告会社に関しても、2003年12月には博報堂、大広、読売広告社という大手3社による博報堂DYメディアパートナーズというメディアの購入を中心に据えた会社がスタートし、日本でもいよいよメディア、広告主、広告会社という3社の構造から大きく変革する時代になろうとしています。このようなメディア専門会社の出現は日本だけの特徴ではなく、欧米では既にメインプレーヤーとして活動しています。2000年のデータですが、英国ではメディアの取り扱いのうち実に83%が従来の広告会社ではなく、メディア専門会社と呼ばれるメディアの業務に特化した会社が行っています。フランスでも75%、ドイツでも60%という状況です。欧州では、広告代理店の系列に属さない一般に独立系のメディア専門会社の取扱が多いためこのような明確な数字として現れています。欧州最大のメディア専門会社は上述した独立系のカラ社です(図表2参照)。

図表1:2003年日本の媒体別広告費
(出典:電通編『平成15年日本の広告費』2004年)
広告費(億円) 前年比(%) 構成比(%)
2001年 2002年 2003年 2002年 2003年 2001年 2002年 2003年
総広告費 60,580 57,032 56,841 94.1 99.7 100.0 100.0 100.0
マスコミ4媒体広告費 38,886 35,946 35,822 92.4 99.7 64.2 63.0 63.1
新聞 12,027 10,707 10,500 89.0 98.1 19.9 18.8 18.5
雑誌 4,180 4,051 4,035 96.9 99.6 6.9 7.1 7.1
ラジオ 1,998 1,837 1,807 91.9 98.4 3.3 3.2 3.2
テレビ 20,681 19,351 19,480 93.6 100.7 34.0 33.9 34.3
SP広告費 20,488 19,816 19,417 96.7 98.0 33.8 34.8 34.1
衛星メディア関連広告費 471 425 419 90.2 98.6 0.8 0.7 0.7
インターネット広告費 735 845 1,183 115.0 140.0 1.2 1.5 2.1
図表2:フルサービスの広告会社とメディア専門会社のメディアの取扱い状況
(出典:日本広告主協会編『広告会社への報酬制度-フェアな取引に向けて-』小泉秀昭監修,日経広告研究所, 2003年)
単位:% 日本 米国 英国 フランス ドイツ オランダ フィンランド カナダ
フルサービス 98 83 14 13 32 42 18 51
メディア会社 4 8 83 75 60 58 68 49
その他 0 9 2 13 9 0 14 0

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